〇2012年公開
〇監督 西川美和
〇原作・脚本 西川美和
〇音楽 モアリズム
〇受賞
第36回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞
第31回ヨコハマ映画祭 主演女優賞
第27回 高崎映画祭 最優秀監督賞、最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞
〇視聴時間 137分
〇出演
市澤里子(松たか子)
貫也の妻、小料理屋「いちざわ」の女将
市澤貫也(阿部サダヲ)
里子の夫、板前
棚橋咲月(田中麗奈)
実家暮らしの独身女性、30代
佐伯綾芽(倉科カナ)
咲月の妹、医師の妻
中野健一(大堀こういち)
里子がバイトするラーメン屋の店主
木下滝子(木村多江)
ハローワークに勤めるシングルマザー、恵太の母親
木下恵太(佐藤和太)
滝子の息子
金山寿夫(小林勝也)
滝子の父親、町工場の経営者
睦島玲子(鈴木砂羽)
貫也の店「いちざわ」の常連客
亡くなった不倫相手の上司の手切れ金を貫也に与えた女性
太田紀代(安藤玉恵)
「カンナ」という源氏名の風俗嬢、東北出身
貫也に金を貸そうとする34歳の女性
皆川ひとみ(江原由夏)
貫也に金を貸そうとした立身館大学付属高校職員
九州出身のウェイトリフティング日本代表選手
松山和子(村岡希美)
貫也に騙され300万円を渡した女性
園部ますみ(猫背椿)
貫也に騙され150万円を渡した女性
輝美(原千果子)
貫也が騙しホテルで会った女性
岡山晃一郎(やべきょうすけ)
貫也の旧友
白井(中村靖日)
紀代を呼んだ客
日野洋太(山中崇)
パチンコ屋で偶然出会った貫也の板前仲間
太田治郎(伊勢谷友介)
紀代の夫、チンピラヤクザ
東山義徳(古舘寛治)
貫也を捜査する刑事
外ノ池俊作(香川照之)
玲子の不倫相手の弟
手切れ金を玲子に渡した人物
堂島哲治(笑福亭鶴瓶)
「堂島探偵事務所」の所長
咲月から貫也の調査を依頼され圭太に刺された人物
探偵(ヤン・イクチュン)
堂島の助手
〇作品紹介
東京の片隅で小料理屋を営んでいた夫婦は、火事ですべてを失ってしまう。
夢を諦めきれないふたりは金が必要。
再出発のため、彼らが始めたのは妻が計画し、夫が女を騙す結婚詐欺!
しかし嘘の繰り返しはやがて、女たちとの間に、夫婦の間に、さざ波を立て始める。
※Amazon Prime Video「夢売るふたり」より
〇雑感
まだまだ足りん、全然足りん。
監督は「蛇イチゴ」「ディア・ドクター」「永い言い訳「すばらしき世界」という凄めの作品を発表し続けている西川美和。
地方出身者の貫也と里子が東京で開いた小料理屋は、料理の質や接客の良さが評判となり少しずつ固定客も増えてきている最中でした。
ある夜、貫也たちの店はいつものように常連客らで溢れていました。
次々に押し寄せる注文を全てこなそうとしていた貫也夫婦ですが、2人ではすぐにオーダーをさばけない状態が生じ、少しだけ貫也が焼き場を離れてしまいます。
注文された串焼きを焼いていた無人のガス台の火が過熱し過ぎたため、一挙に燃え上がった火の粉が吊るされた品書きに引火してしまう事態に。
接客中の里子と貫也は客の悲鳴を耳にして初めて異変に気づきますが、店内に延焼し始めた炎を前にパニックに陥ります。
貫也は汲み置きの水をかけ始めますが、慌てていたためプロパンガスのボンベを倒してしまいさらに激しい炎上をもたらす結果を招きました。
呆然として立ちすくむ貫也や夫を必死で助け出そうとする里子は、常連客からかろうじて救出され一命を取り留めます。
しかし、2人の夢の象徴である「料理店」は全て燃え落ちてしまいました。
ようやく手元にたぐり寄せたかに思えた夢を突如失った貫也は気力を失いますが、なんとかして貫也の夢を叶えさせたいと願う里子は街中のラーメン屋でバイトを始め必死で夫を支えようとします。
そんなある夜、例の如く飲んだくれた貫也が私鉄駅のベンチで寝ている時、かつて自分の料理屋の馴染客だった玲子が酔い過ぎたのか隣の席で横たわっていました。
貫也に声をかけられ起き上がった玲子は急に貫也の上着へ嘔吐物を吐きかけてしまいます。
衣服を汚された貫也は終電を逃した事もあり、詫びる玲子に連れられて彼女のマンションへ上がり込みました。
不倫相手の上司の死去によって親族から「手切れ金」を受け取ったばかりだった玲子は「再び店を再開したい」と話す貫也にそれを全て手渡しました。
急いで帰宅した貫也は有頂天となって「大金が手に入った!」と里子に話しますが、大金の出所を知った里子は貫也を熱湯風呂に入れて厳しく詰問します。
しかし・・・まさにその時、里子はあるアイディアを思いついたのでした。
それは「大都会でさまよう孤独な女性に結婚という夢をほのめかす事で、多額の貢ぎ金を手に入れる」というものだったのです。
こうして貫也と里子は念入りに練ったプランを元に複数の女性をターゲットとして大金をせしめる作戦をスタートさせます。
すべては「2人の夢のベースとなる"料理屋"」を実現するために・・・。
里子は貫也にこんな言葉をかけてはっぱをかけたりもしました。
隅田川の向こうに"ずどーん"とスカイツリーが見えてさ、
1枚板のカウンターを"しゃきっ!"とはって、
什器も建具も全部新調して"ぱり~"っとした店を
作るっちゃないと?
これって、「博多弁」であってます?
バイト先のラーメン屋店主が明らかに自分に好意を寄せている事を知りつつも里子は貫也への気持ちを頑として揺るがせる事はないのですが、その愛する夫はこの瞬間も「夢を叶えるためという理由で他の女性と緊密に接している」という考えたくない事実を受け入れるしかないのです。
しかもマッチングアプリで出会った女性とか飲み屋で落とした女性はまだしも、オリンピック代表選手にまでも手にかけようとした時にさすがに躊躇する貫也を目にした里子の思いやいかばかりかって話なんです・・・。
誰の為にこんな許しがたい普通じゃない違法行為を続けているんだよ!!え!?
これってまさに"愛の地獄"じゃないですか?
画面上から読み取れた範囲ですが貫也はこれらの女性たちからこんな借金(結局はぼったくり)をしているようでした。
松本和子 300万円
今関多美 50万円
高取祥子 150万円
園部ますみ 150万円
幸田里香 50万円
睦島玲子 200万円
これだけですでに合計900万円!
この程度の資金で東京の下町に「料理屋」が開店出来るのかどうかはちょっと分かりませんが、いささか安過ぎかも?
本作品は貫也を中心に物語が展開しているような構成に見えますが、実は逆ではないでしょうか。
本作品で焦点化されているのは「大都会」の中で生き抜く「女性」の生き様であり、彼女たちが奏でる"音"色だと思うんです。
各場面においてポイント的に流れ出すのが軽めのブルースっぽい"ジャズギター"というのも大事な点かと。
ルート音と基本的なブルースコードからあまり逸脱しない範囲で微妙に"アンバランス"を匂わせている感じですよね。
貫也は結局「恋に落として金を巻き上げために狙いを定めた女性たち」を手玉に取る事はしてませんし、時には彼女たちの立ち位置に対し「同情」や「共感」すら持っています。
その点はカンナの部屋に押し入ってきたチンピラも似た雰囲気がありました。
"金を返さんかい!"と乱入してきた割には狼藉を働くこともないこのチンピラも、きっとカンナとの深いストーリーがあるのだろうと思った次第です。
ラスト近くから予期しなかった展開が起こってくるので、詳しい結末に関してはぜひ実際の物語をご覧になってお楽しみ下さい!
本作品は、とにかく"松たか子"の演技を見るだけでも十二分に楽しめると思います。
"目線""眉""口元"だけでこれほどの演技が出来る女優ってやはり唯一無二ではないでしょうか。
もちろん他の女優陣にもとび抜けた演技力を披露する人たちが多いのも知っていますが、本作品の"里子"をこのように演じられる人はちょっと見当たりません。
昭和時代まで遡って探せたら複数の候補は見つかりますが、それはちょっと違反ですよね。
職人肌で気弱な貫也役の阿部サダヲは意外と目立たないようにしていたのかな?
そして彼は本作品に続いて「殿、利息でござる」→「彼女がその名を知らない鳥たち」→「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」「決算!忠臣蔵」「MOTHER」→「死刑にいたる病」→「シャイロックの子供たち」→「リボルバー・リリー」という風に続々と話題作に出演する事になるんです。
コンプライアンス問題にも触れたりしているけれど、基本的には"劇団員"スピリッツを保っている男優だと感じています。
本作品は、アマプラ等の配信サービスでの視聴も可能です。
"騙し騙され"というサスペンスチックな面はさほど強くないので、気軽にトライしてみて下さい!
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by django32002
| 2024-05-24 17:24
| 映画
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