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映画

アイ・アム まきもと

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〇公開 2022年9月30日
〇監督 水田伸生
〇原作 Uberto Pasolini「STILL LIFE」
〇脚本 倉持裕
〇音楽 平野義久
 ED曲 宇崎竜童「Over The Rainbow」
〇視聴時間 104分
〇出演
牧本壮(阿部サダヲ)
市役所の「おみおくり係」職員、40代独身
津森塔子(満島ひかり)
孝一郎の娘、養豚場で働く女性
神代亨(松下洸平)
牧本に迷惑を被っている刑事
下林智之(でんでん)
牧本をサポートする葬儀屋
小野口義久(坪倉由幸)
新任の市民福祉局局長
「おみおくり係」廃止を決定した人物
今江みはる(宮沢りえ)
漁港にある"みはる食堂"の女将、孝一郎の元恋人
平光啓太(松尾スズキ)
"食品工場"で働いていた孝一郎の元同僚
牧本が遺した携帯電話に唯一登録されていた人物
槍田幹二(國村隼)
北海道の炭鉱で孝一郎に助けられた男
牧本の上司(篠井英介)
元福祉局長
今江衣都(市川紗椰)
みはるの娘
蕪木孝一郎(宇崎竜童)
牧本の向かいの家で孤独死した老人、享年62歳
孝一郎の娘(片山友希)
ホームレス(小林勝也)
ホームレス(嶋田久作)
漁師(及川いぞう)
漁師(久保酎吉)
孝一郎の元同僚(成清正紀)

〇作品紹介
小さな市役所に勤める牧本の仕事は、人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」。
故人の思いを大事にするあまり、つい警察のルールより自分のルールを優先して刑事・神代に日々怒られている。
ある日、牧本は身よりなく亡くなった老人・鏑木の部屋を訪れ、彼の娘と思しき少女の写真を発見する。
一方、県庁からきた新任局長・小野口が「おみおくり係」廃止を決定する。
蕪木の一件が"最後の仕事"となった牧本は、写真の少女探しと、一人でも多くの参列者を葬儀に呼ぶため、わずかな手掛かりを頼りに蕪木のかつての友人や知人を探し出し訪ねていく。
工場で蕪木と同僚だった平光、漁港で居酒屋を営む元恋人・みはる。炭鉱で蕪木に命を救われたという槍田、一時期ともに生活したホームレス仲間、そして写真の少女で蕪木の娘・塔子。
蕪木の人生を辿るうちに、牧本にも少しずつ変化が生じていく。
そして、牧本の"最後のおみおくり"には、思いもしなかった奇跡が待っていた。
※「アイ・アム まきもと」公式サイトより

〇雑感
亡くなられた方の思いは?
監督は「謝罪の王様」(2013)「お前の罪を自白しろ」(2023)「ゆとりですがなにか-インターナショナル-」(2023)の水田伸生。
脚本は「12人の死にたい子どもたち」(2019)の倉持裕。
ウベルト・パゾリーニ監督の映画「おみおくりの作法」(2013)のリメイク版とのこと。
市役所に勤める牧本壮は"空気が読めない+人の話を聞かない+誰にも心を開かない+立って食事をとる"・・・そんな独身男性です。
彼はたった1人で「おみおくり係」という部署を任されています。
それは県庁から小野口が来るまで局長だった牧本の上司が彼の特性をしっかり把握した上での配置だったと思えます。
言動はかなり風変りだけど仕事はきちんと真面目にこなすことを評価したとも言えるでしょう。
さて、市役所の片隅にある「おみおくり係」デスク周辺には牧本がまだ葬儀を執り行っていない骨壺や遺影がたくさん集められています。
遺骨が家族などの身寄りの手に渡ることを強く望む牧本は出来る限り火葬を伸ばしておきたかったのです。
清掃員の女性が足元にあって通路をふさぎそうな骨壺に文句を言っても、牧本は全く意に介しません。
牧本は誰からも看取られることなく亡くなり葬儀に誰も参列しなかった人たちの遺品類をきちんとまとめてストックしてもいます。
そして、彼らの葬儀自体は全て牧本の自費で執り行われ続けてきたのです。
一定の期間を経ても最終的に遺族が取りに来ない遺骨は、牧本が市営の無縁墓地に収めていました。
そんな牧本は管轄の刑事から「警察署は遺体の保管金庫じゃない!」と早急な火葬を何度も迫られたり、TPOを上手く使い分けられないことで回りから妙な目で見られることも度々でした。
しかし彼は持ち前の粘り強い行動力や"鈍感"という特質をフルに発揮して様々な人たちとの出会いを重ね続け、ついに1人の男性の人生を明らかにしていくのです。
孝一郎を許さないと言い切った娘の塔子をはじめ「みはる、工場の元同僚、漁港の漁師たち、ホームレス仲間、炭鉱で命を助けた男」が孝一郎の葬儀に揃って参列した後、牧本が自分のために購入していたにもかかわらず塔子のために名義を秘かに譲っていた墓地へ向かい始めると強い雨が降り出します。
ところが彼らが墓地に着いた途端、雲が途切れ急に雨がやんで光が射し込み始めました。
まるで天が彼らを待ってでもいたかのように。
ただ、その中には牧本の姿はありませんでした。
少し離れた丘の上に建てられている市営の無縁仏の遺骨置場にいた刑事の神代は牧本にこう話しかけます。
あんたの粘り勝ちだよ、牧本さん。
本作品は"人間の死"をメインテーマに据えた実はかなりヘビーとも思える作品になっています。
それでも必要以上に重苦しくなっていないのは何よりも"阿部サダヲ"の存在が大きいと思えました。
もちろんコメディではないので笑いをとるシーンはほとんどないものの、なんだか憎めない独特の雰囲気を彼が纏っているからかもしれません。
少子高齢化が急速に進行している日本では核家族化に伴い高齢者の一人暮らしも増加し続けています。
その結果として「孤独死」も年間約2~3万件ほど発生していると言われています。
政令指定都市だけでも無縁仏は年間約8000柱近くになるといったデータもありました。
"身寄りがない人"や"遺骨を引き受けてくれる人がいない"といった場合、自治体が遺骨を引き取り火葬・納骨を行うことになり、遺骨は自治体が管理する合同墓などに埋葬されます。
まさに牧本が行っていた行政業務そのものですね・・・。
新たに異動してきた小野口局長は行政の効率と合理化を追求するべく「とっとと業務を遂行するだけだ!」と牧本に指示していましたが、これって人間の尊厳に関わる根源的な問題と思うんです。
本作品の途中には"引き取り手のない御遺体を火葬した後、頭骨が大き過ぎて骨壺に入らないため火葬場の係員や葬儀屋(=でんでん)や牧本が慌てているシーン"がありました。
どうしても入らなかったため葬儀屋が木槌で思いきり叩いて頭骨を粉々にしてしまうんですが、このシーンをどう捉えるかは結構重要だと思った次第です。
警察庁の発表によると2024年に自宅で亡くなった一人暮らしの方は全国で7万6200人。
その7割近くは7日以内に発見されていますが、死後1週間以上経過して発見されたケースは2万件を超えるそうです。
死後1週間経つと人間の身体は腐敗して骨が露出したり体液が流れ出したりしていると思われますが、牧本はただ真面目に黙々と己の仕事を果たそうとしていました。
"効率重視の小野口だったらこうした場合にどうするのか?"等と思ってはいけません。彼だってちゃんと職務を全うする筈ですから。
ちなみに東京都の例では1年間に自宅で1人暮らしをしていた10372人が死亡しているそうなので、単純計算で1日に28人が孤独死していることになります。
故郷に一人暮らしをしている両親や祖父母がいる人は、本作品を観終えると久しぶりに電話をかけたり帰省をしたりしたくなるかもしれません116.png
ということで、最後に。
牧本を巡る物語が終わった後、静かに宇崎竜童が歌う「虹のかなたに」が流れ始めます。
Somewhere over the rainbow
Way up high
There's a land that I heard of
Once in a lullaby

Somewhere over the rainbow
Skies are blue
And the dreams that you dare to dream
Really do come true
訳してみて下さい。雨が急に上がった意味もここで伝わってきます。
本作品のラストシーンととてもマッチしていると思えてなりません。
3月からアマプラで配信がスタートしたばかりの作品です。
ぜひトライしてみて下さい!
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by django32002 | 2026-03-04 16:07 | 映画 | Comments(0)

あくまで趣味の範囲ですので、そこはよしなに!!


by Yorozu