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映画

傲慢と善良

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〇公開 2024年9月27日
〇監督 萩原健太郎
〇原作 辻村深月「傲慢と善良」(朝日文庫)
〇脚本 清水友佳子
〇音楽 加藤久貴
 主題歌 なとり「糸電話」
〇視聴時間 119分
〇出演
西澤架(藤ヶ谷太輔)
ビール会社「NISHIZAWA BREWERY」の社長
真実の婚約者
坂庭真実(奈緒)
英会話教室で働く事務員
アプリで架と出会った女性
高橋耕太郎(倉悠貴)
真実が出会う災害ボランティアのリーダー
東京の大学を卒業後、地元に戻って来た青年
美奈子(桜庭ななみ)
架の友人、"勝ち組"の女性
坂庭正治(阿南健治)
前橋に住む真実の父親
坂庭陽子(宮崎美子)
真実を溺愛する母親
岩間希実(菊池亜希子)
真実の姉
よしの(西田尚美)
「Funny Nanayama」のママ
ボランティアをする真実を居候させてくれた女性
小野里(前田美波里)
結婚相談所の所長
陽子から真実の見合いを頼まれた女性
大原憲司(小林リュージュ)
架の大学時代の友人
金居(嶺豪一)
真実の見合い相手
元ヤンの夫
花垣(吉岡睦雄)
真実の見合い相手、歯科医
いずみ(里々佳)
真実が遊園地で金居とデート中に遭遇した中学時代の友人
三井亜優子(森カンナ)
架の元カノ
(小池樹里杏)
美奈子の友人

〇作品紹介
仕事も恋愛も順調だった架だったが長年つきあった彼女にフラれ、マッチングアプリで婚活を始める。
そこで出会った控えめで気の利く真実と付き合い始めるが1年たっても結婚に踏み切れずにいた。
しかし、真実からストーカーの存在を告白された直後、「架くん、助けて!」と恐怖に怯えた着信を受ける。
彼女を守らなければとようやく婚約したが、真実が突然姿を消した。
両親、友人、同僚、過去の恋人を訪ね居場所を探すうちに、架は知りたくなかった彼女の過去と嘘を知るのだった―。
※「傲慢と善良」公式サイトより

〇雑感
運命の恋、そう信じたかった
直木賞作家の辻村深月が2019年の第7回ブログ大賞(小説部門)で大賞を受賞した原作の映画化作品です。
監督は「東京喰種 トーキョーグール」(2017)「ブルーピリオド」(2024)の萩原健太郎。
波瑠が出ていた映画「ホテルローヤル」(2020)や吉高由里子の主演ドラマ「わたし、定時で帰ります。」(2019、TBS)「最愛」(2021、TBS)等の清水友佳子が脚本を担当。
2024年にフジTVで放送された広瀬アリス主演の「366日」も彼女の脚本でした。
アイドルグループ"Kis-My-Ft2"の藤ケ谷太輔が架(かける)を演じています。
そして陰キャっぽい見かけだけどこまめで愛情深そうな真実を演じるのはもはや大物女優と言っていいと思える奈緒。
本作品に限らず、奈緒が出ている物語はどれも"当たり感"が強めだと思っています。
若手経営者の架は恋人から望まぬ別れを告げられた後、新たなパートナーを探すためマッチングアプリで選択した女性との瞬間的なデートを繰り返す日々を送る毎日でした。
そんな架が次に出会ったのが地元を離れて上京してきた真実だったのです。
おとなしくて真面目そうな真実の言動に少しずつ惹かれていった架は、彼女を友人のホームパーティへ招待します。
見るからに都会の女性風な美奈子たちの好奇の視線を受けながら、真実は健気に振る舞おうとしていました。
そうした付き合いが続いたある日、架は"ひょっとしてこれまでアプリで出会った女性たちも連れて来てなかった?"と私が言いたくなりそうな高級レストランでのディナーに誘った真実に向けてポケットからプレゼントを出してきたのです。
すでに彼氏と言える男性が明らかに「指輪」が入っていそうな容器をおもむろに取り出して捧げたら、多くの女性は「プロポーズ!?」とドキドキ感も最高潮になると分かっているのに、入っていたのが単なる誕生日祝いの装飾品だったら女性は気持ちの整理が難しくないですか!?
それでも"礼儀正しい"真実はなんとか架に笑顔を向け「大事にするね」と言って感謝を伝えていたけれど・・・。
初めから架と真実の心はどこかですれ違っていたのだと思いました。
それでも自分の意思に沿う形で相手との付き合いを続けようとする2人でしたが、それでもどうにか"寿退社"を迎えることとなった真実は職場の送別会に出た帰りにある出来事を経験してしまうのです。
さて。
最近のデータによるとマッチングアプリの利用経験者は「20代で53.9%、30代で52.1%」となっています。
今やマッチングアプリで出会ったカップルがめでたく結婚するというのは全く不思議な現象ではありません。
しかし、この物語に出て来る人物たちはそれぞれが自分なりの「出会いに関する哲学」を持っているので少し話がややこしくなっていくのですね。
架の彼女だった亜優子は"交際を続けよう。まだ君は若いじゃないか。"と話す架に向かってこんな言葉を投げかけていました。
私にとってはもう27なんだよ。
また、真実の母親は婚期が遅れた希実(真実の姉)の二の舞にならないようにと真実が早く望ましい男性と出会うことを何より望んでいたため、半ば強引な形で真実に見合いを仕向けていました。
母親の陽子は真実の行方が分からなくて自宅を訪れた架に対し聞えよがしにこう吐き捨てています。
訳の分からないネットのお見合いなんかじゃダメなの。
そして、"マッチングアプリを使った機械的な出会いの提供"と対照的な、昔からよくある"結婚相談所によるお見合い斡旋"のベテラン所長として小野里が登場してくるわけです。
ちなみに母親に依頼された所長の小野里は真実の見合いを2件設定しましたが、真実は"ピンとこない"という理由でどちらも断っています。
真実の過去を調べようと彼女が見合いをした男性2人と会って来た架が相談所を訪れた際、小野里は架に向かって次のように話しました。
婚活がうまくいく人の特徴はね、「自分が欲しいものが分かっている人」「ビジョンのある人」なの。
「高慢と偏見」ってご存じ?
今の日本の婚活は「傲慢と善良」。
皆さん「自分は高望みをしているわけじゃない」と謙虚で自己評価が低いの。
その一方で「自分にはこの人じゃない」って自己愛がとても強い。
傷つきたくない、変わりたくない、ささやかな幸せをつかみたいだけ。
自分の価値観に重きを置きすぎで、皆さん傲慢です。
同時に、親の言いつけを守る善良さも持ち合わせている。
よく皆さん「いい子なのになぜ結婚できないのか」とおっしゃいますが、いい子だからこそ結婚出来ないと言う方が正しいのかもしれませんね。
誰かに決めてもらうことが多すぎで自分がない。
でも、恋愛の好みだけは従順になれない。
傲慢さと善良さが矛盾なく同じ人の中に存在してしまう。
不思議な時代なんです。
よく皆さん、"ピンとくる"っておっしゃるでしょ?
あれってその人が自分につけてる値段だと思うの。
つまり、自分の値段が高いってこと。
相手を鏡のようにして見る自己評価額。
だからわたくし、ぜひともあなたに会ってみたかったの。
真実さんがご自分につけた値段を知りたかったから。
この中にある「高慢と偏見」とはジェイン・オースティンが19世紀初めに書いた恋愛小説のタイトルです。
映画やドラマにもなっていますよね109.png
本作品が伝えたかったことの多くはこの小野里の言葉に集約されているんじゃないかなぁ?
そう考えると、真実の2番目の見合い相手だった歯科医の言葉である「僕も無理やり自分を納得させようとしていた」とか、架の友人の美奈子が「架はさ、あの子のどこがよかったわけ?」などがより意味を持ってくることになります。
ちなみにこの美奈子と梓の2人組は自分を理解していない単なる都会風に見せかけた中身が空っぽのおバカ女性というかなりやっかいな存在なのです。
彼女たちが余計なことをしなければもっとスムーズに架と真実の物語は展開していたに違いありません。
何があったかというと(ネタバレになってしまうから小文字で書いておきます)・・・
真実が失踪してから2週間後のある夜、架が美奈子や梓と一緒にバーで過ごしていた時のことです。
美奈子がこんな打ち明け話を始めました。
・真実さんがいなくなった2週間前の日の夜、お酒を飲んで帰ろうとしていた私たち2人は職場の送別会を終えたばかりの真実さんと出会ったの。
・一緒に少し飲みましょうと誘ったら真実さんは付き合ってくれた。
・その店でこんなやりとりをつい喋ってしまったのよ。
 「真実さんも上手くやったわよね。ストーカーってウソだったんでしょ?
・そう言ってもあの子、否定しなかったわ。
・架の中ではあの子は70%なんでしょ。そう言ってたじゃない?彼女にそれ言ったら固まってた。
この件にショックをうけた真実は架と同棲していた部屋に戻ったけれど、彼は寝ていて真実が泣いているのに気づきませんでした。
その夜、真実は荷物をまとめ東京を出て行ったのです。
ここまでが多分"ストーリー前編"で、その後に真実が佐賀でボランティアを始めてからが"ストーリー後編"になるのだと思います。
1人になった架が東京で会社経営をしている時、真実は七山市七山町にある地域の公民館で行われたボランティア集会「助け合って元気になる」に参加していました。
その集会で司会進行をしていたのはボランティアリーダーで少しぶっきらぼうな高橋でした。
真実は地元の人々と一緒に地道なボランティア活動を始め、"Funny Nanayama"という飲み屋のママのはからいで店の2階に居候させてもらうことになります。
高橋をはじめとしたボランティア仲間の人々との関わりや大自然との触れ合いが真実に変化をもたらしていきます。
ちなみに、作中で映る"Funny Nanayama"は佐賀県鹿島市の肥前七浦に実在するお店です。
"七山"という地名はこの"七浦"なわけですね。
ラスト近くで真実が架に電話する「肥前七山駅」のシーンは佐賀県に実在する「肥前七浦駅」で撮影されました。
ただし七山唯一の名産品である"みずか"というみかんの銘柄はないみたいですが、最寄りの道の駅などでちゃんとみかんは販売されているみたいです。
※映画全体を通してだと前橋市内や伊勢崎市内もロケ地でした。
離れて暮らした日々が架と真実に大事な"気づき"をもたらしてくれます。
それは、"傲慢だった自分"であり"善良という隠れ蓑をかぶっていた自分"でした。
全てを拭い去った後に残された本当の自分の気持ちに初めて出会えた時、2人が選ぶ道はおのずと決まっていました。
このあたりの表現で"奈緒ってやっぱり凄い!"と感じたのは、東京にいた頃と佐賀で1年暮らした後では真実の眼の輝きと目つきが全く違うんです。
当然演技に対する監督の指示があってのことだとは思いますが、見事としか思えませんでした。
ラストがハッピーで終わるのは是か非かなどという論争もあったみたいだけれど、原作を限りなく忠実になぞる映像だけが映画じゃないし、なにより映画って"エンタメ"であることを忘れないようにしたいと思う次第です。
ちょっと長々と書いてしまったので、今回は他の俳優に関しては割愛させてもらいます。あしからずですハイ・・・119.png
今回はたまたま専門チャンネルで放送していたのを視聴出来ましたが、各種配信サービスでの配信は3月末から4月にかけて始まる予定のようです。
それまで楽しみにお待ち下さい!
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by django32002 | 2026-03-02 15:43 | 映画 | Comments(0)

あくまで趣味の範囲ですので、そこはよしなに!!


by Yorozu