
〇公開 2024年7月12日
〇監督 近浦啓
〇脚本 近浦啓、熊野桂太
〇音楽 糸山晃司
主題歌 佐野元春&THE COYOTE BAND「今、何処」
〇受賞
第71回サン・セバスティアン国際映画祭
最優秀俳優賞、アテネオ・ギプスコアノ賞
第67回サンフランシスコ国際映画祭
グローバル・ビジョン・アワード
第16回TAMA映画賞 最優秀新進監督賞
〇視聴時間 134分
〇出演
遠山陽二(藤竜也)
認知症になった父親
「高崎研究所」の助手だった元大学教授
遠山卓(森山未來)
陽二の息子、舞台俳優
夕希(真木よう子)
卓の婚約者、北九州在住
直美(原日出子)
陽二の再婚相手
直美の息子(三浦誠己)
卓に入院費を要求する男
緒方朋子(神野三鈴)
熊本の実家で直美を匿う妹
鈴本「利重剛)
大学教授、陽二の教え子
坂口(塚原大助)
劇団の演出家
劇作家(市原佐都子)
坂口と共に卓の稽古に立ち会う女性
〇作品紹介
小さいころに自分と母を捨てた父が、警察に捕まった。
連絡を受けた卓が、妻の夕希と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義母は行方不明になっていた。
卓は、父と義母の生活を調べ始めるが――。
父と義母の間に何があったのか?
すべての謎が紐解かれた時、大海のような人生の深みに心が揺さぶられる。
※「大いなる不在」公式サイトより
〇雑感
ここにいない それが全部ですよ
監督は「コンプリシティ/優しい共犯」(2018)で長編映画デビューをした近浦啓。
遠山家の父親・陽二と息子・卓が物語の中心となり、陽二の後妻・直美と卓の婚約者・夕希を加えた4人が織りなす物語となっています。
かつては大学での難しい研究に人生を捧げて来た教授だった陽二がスーツ姿で手荷物を持ち玄関を出て行こうとすると、そこには警官隊が集結していたというシーンで始まるので、瞬間的に「何事?」と思うことになり嫌でも展開に引き込まれてしまいました。
生育期における父親・陽二との軋轢を抱えながら実家を離れて暮らしていた卓は厳格な父が逮捕されたという知らせに驚きながらもとにかく実家へ向かうことにします。
かつての面影は残しつつも明らかに認知症を感じさせる父親の様子に触れた卓は戸惑います。
本作品は「数十年前の陽二と卓=過去」と「陽二の過去を探る卓=現在」という2つの時間軸が少しずつ重なり合うことで「陽二の人生とはどのようなものだったのか」が明らかにされ、同時にそれに触れた卓にも変化が起こり始めるという筋書きになっていると思います。
かなり乱暴な説明だけど、あまり詳しく書くと各シーンから受けるものが違ってきそうなのでこんな書き方にしています。
卓を演じる森山未來、やっぱりピカ一の俳優です!
映画「モテキ」(2011)「怒り」(2016)「アンダードッグ」(2020)での演技が思い出されますし、アニメ「聖☆おにいさん」(2013)ではイエスの声を担当していました。
本作品の冒頭と後半部分で演劇の稽古をしているシーンがあるけれど、ガチの劇関係者(市原佐都子等)と一緒に写り込んでいる場面なのでかなり注目度高いかもと思ってしまいました。
そして・・・認知症の父親・陽二役が84歳になった藤竜也!
倍賞千恵子と共演した「初恋~お父さん、チビがいなくなりました」(2019)「台風家族」(2019)等や近浦啓監督の「コンプリシティ/優しい共犯」に出ている超ベテラン俳優です。
1976年に出演した「愛のコリーダ」という映画が当時バズったらしいのだけど、まだ観たことありません・・・。
卓の妻を演じるのは「そして父になる」(2013)「ある男」(2022)「金子差入店」(2025)等の映画や多数のドラマに出演している2児の母親・真木よう子。
北川景子が子供を誘拐する(!)母親を演じたドラマ「あなたを奪ったその日から」(2025、フジTV)で"はちどり保育園"の園長だった原日出子が陽二の想い人役を演じています。こちらもベテラン女優ですね。
TBSで放送中のドラマ「未来のムスコ」や映画「TOKYO タクシー」(2025)に出ている神野三鈴が姉の直美の代わりに陽二の家で世話をする妹・朋子役を演じています。
この人が出て来ると瞬間的に画面が妖艶になって困るんですが、今回はぐっと抑え気味なのは分かりました。
"陽二と直美の間に存在した恋の想い"を示す互いが交わした手紙の文章がたびたびクローズアップされて流れ出すのがなんとも言えません。
私は多分、今日という日を何度も思い出すんでしょう
彼の思いが、ささくれ立った心に流れ込んでくる
あの内気で皮肉屋の男が、20年も経って
こんな手紙をくれるなんて、夢にも思わなかった
お互い、結婚して子供もいる
許されることではないのかもしれない
でも、こんなに満ち足りたうれしさを
私は、この胸の中でとどめておくことができるだろうか
あなたがしたためてくれた、この手紙を前にして
私のこころは、あなたの形をして鍵でしか開かず
あなたの声でしか震えない
そういう性質のものだったのだと知りました
前に、あなたは海のような人だと言いました
静かで穏やかで寄せては返すことをやめない
確かな波のせせらぎ
あなたはこの海のような
優しさと強さをもった女性だ
あなたのふるさとが、この海なのであれば
私のふるさとは、あなたです
一途だけが取り柄の愚かな青年は、正しかったのだと
20年の時を経た今、叫びたい
あなたのことが好きです
女性に「好きだ」と言うことは
こんなに誇らしいものなのですね
ありがとう
あなたがどうしようもなく好きだ
ちなみに卓が携帯を通して夕希にこの手紙を読み上げている場所は熊本県宇土市にある"長部田海床路"(ながべたかいしょうろ)です。
インスタ映えの名所で有名
。
ここを離れた後に卓が電車に乗るために行き着いた駅として「網田(おおだ)駅」が映っているのだけど、"長部田海床路"の紹介サイトを見ると最寄り駅は「住吉」駅となっているんですよね・・・。
網田駅も住吉駅も熊本駅と三角駅を約1時間で結ぶJR三角線の途中にある駅ですが、「長部田海床路」に行くなら「住吉駅」で降りれば徒歩約25分だけど、住吉駅と網田駅は電車で約10分ほど離れているんだから「網田駅」から海床路まで歩くとかなりかかるんじゃないかなぁ?
そうか!ひょっとしたら陽二の入居している老人施設のある場所が関係しているのかもしれないと思ったので、あれこれロケ地を探ってみると北九州市内にある介護付きホーム「さわやか鳴水館」という施設で入居シーンを撮影したことが分かりました。
近浦啓監督自身が北九州出身ということも関係しているみたいですね。
ちなみに映画の中には実際にこの施設で働いているスタッフも出てきているとか。
なぜこんなに腰が曲がっているのか
どうも不思議だと思っていたら
この袋のせいなんだね
それに、このずた袋と
この履き替え用の、どた靴と
じたばたするんじゃないってば
もう、こんなものは必要ないよ
この鉄砲も、この機関銃も
この道具箱も、この剣も
おやおや
どうしても手放したくないみたいだね
古くさいサビ刀なのに
さあ、いい子だから
じっとしておいで
陽二が入居する際にスタッフから「延命はどうされますか?」と問われた卓は"すぐ決めないといけないのか?"と少し不満げな態度を示していたけれど、自らの父親が生きて来た過去を目にすることで"出来るだけ長生きさせてあげて下さい"と答えるようになっていきました。
「家族」「老い」「愛」など様々な欠かせない問題をあらためて見つめてみる大切さを感じられる良作と思います。
今のところ各種配信サービスでの視聴は出来ないようですし、DVD等の販売もされていません。
※サウンドトラック盤はアマゾンで手に入るみたいです。
私はたまたま邦画専門チャンネルを観る機会があったので視聴出来た次第です。
多分、そう遠くないどこかで配信がスタートするのではと思えるので関連情報を素早くキャッチして下さい!

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by django32002
| 2026-02-11 16:44
| 映画
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