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映画

12人の優しい日本人

〇パルコ公演(2005年)12人の優しい日本人_f0169598_18591560.png

〇作者、演出 三谷幸喜

〇音楽 本間勇亮

〇幕数 1幕1場

〇受賞 第40回紀伊国屋演劇賞 個人賞(浅野和之)
    第13回読売演劇大賞 最優秀男優賞(浅野和之)

〇キャスト

陪審員1号 浅野和之(40歳の女子高体育教師、陪審員長)

陪審員2号 生瀬勝久(精密機械製造会社従業員)

陪審員3号 伊藤正之(喫茶店店主)

陪審員4号 筒井道隆(元信用金庫職員)

陪審員5号 石田ゆり子(商事会社庶務係、メモ魔)

陪審員6号 堀部圭亮(医薬品会社セールスマン))

陪審員7号 温水洋一(職人)

陪審員8号 鈴木砂羽(5歳になる息子を持つ主婦)

陪審員9号 小日向文世(開業歯科医)

陪審員10号 堀内敬子(クリーニング店経営者)

陪審員11号 江口洋介(役者、自称『弁護士』)

陪審員12号 山寺宏一(大手スーパー課長補佐)

〇あらすじ

夜の国道である男がトラックにはねられて死亡する事件が起こる。
死亡した男性を路上に突き飛ばした21歳の妻が殺人容疑に問われる事となり、夫殺しに関する陪審員審理を行なうために陪審員として選ばれた一般市民12人が裁判所の会議室に集まる。
会議室に揃った互いに初対面の12人は、とりあえず1度だけ許可される「喫茶店の出前の注文」を始める。
それぞれが勝手な注文を言い出す中で、1人ずつの個性が浮かび上がってくる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
容疑者となった21歳の女性の夫はヒモ状態であったため、彼女は5歳になる息子と家を出て暮らしていた。
復縁を求めて彼女の家にやって来た夫は、逃げ出した彼女を追いかけ夜の歩道で彼女に襲いかかる。
2人はもみ合いとなり、夫は道路側によろめいてしまい走って来たトラックにはねられて死亡する。
事件の目撃者の主婦は、次のように証言する。

2人は対等にやりあっていた。
彼女は「死んじゃえ!」と叫んでいた。

トラックの運転手は、こう証言する。

自分はクラクションを鳴らしブレーキをかけたが、彼女は被害者を突き飛ばした。

被告人の女性は、裁判でこう主張する。

襲われたので抵抗はしたが、突き飛ばしたりしていない。
クラクションの音は聞こえなかった。
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出前が届く前に陪審員長を務める陪審員1号が手順に沿って「陪審員ハンドブック」を読み上げ始めるが、早く審理を終えたい陪審員から文句を言われたため、とりあえず「有罪か無罪か」の多数決をとってみる事になる。
すぐに12人全員が『無罪』を選び、あっけなく審理は終わりかけたところで、陪審員2号が言い始める。
『無罪』を選ぶ事に自信が持てないんです。
きちんと話し合いをしましょう。
出前が届いていないこともあり、部屋を出ようとしていた陪審員たちも座り直す。
話し合いの継続を求めて陪審員2号が『有罪』に意見を変えたため、再び話し合いが始まる。
2号の求めで、陪審員たちは端から順に無罪を選んだ理由を述べる事となる。
陪審員11号が喫う煙草を避けるために席を移動していた陪審員8号は明確な理由を持っていなかった。
2号に強く追及された8号は鼻血を出してしまう。
3号は”パス”をし、4号は「直感」などと言い出す。
2号に問い詰められた4号は「悪い人には見えなかった」という事を理由にあげる。
5号は事件の経過をメモした手帳を読み始めるが、自分自身の意見は持っていなかった。
「正当防衛が成立するかどうかがカギだ」と言う12号は、目撃者の「おばちゃん」の証言を否定して被告人の主張が正しいと言う。
5号も12号を支持し、「自分は人の嘘を見抜ける」と断言までするが、9号にやり込められる。
9号は「検察が殺意を立証できなかった以上、被告人は無罪だ」と論理的に意見を述べる。
被害者のようなヒモが大嫌いな7号は「自分は、『有罪』でも『無罪』だ」と支離滅裂な事を口走る。
6号は「自分の考えは9号とほぼ同じだ」と言うだけだった。
それまで話し合いに参加していなかった11号は、「有罪の場合でも執行猶予がつく。刑に服さないのなら無罪でいい」という一見して合理的な意見を述べ、2号以外の陪審員たちを納得させてしまう。
話し合いが行き詰ったため、「『有罪』が増えていなければ2号は『無罪』に意見を変える」事を条件とし、無記名投票で多数決をとる事になる。
投票の結果は『有罪』が2票となっていたが、投票用紙が13票ある事で2号による操作が発覚する。
事前の条件に沿って話し合いは終わりかけるが、議論を楽しみたくなった9号が急に『有罪』に意見を変える。
喫茶店の出前が届き、話し合いは一旦休憩になる。
3号は、注文した大きなパフェを食べ始める。
世間話が始まり、二人の横綱候補のどちらが先に昇進するかが話題となるが、2号は1人だけ他の11人と意見が合わなかった。
9号が被告人の正当防衛を覆す考えを述べ始める。
被害者は居酒屋で酒を飲んだ後に、居酒屋から犯行現場までの約2キロを走っており、現場に着いた時は被告人を襲う体力はなかったのではないか。
この考えに触発された2号は、「被告人は意図的に被害者に追いつかれて、計画的に犯行に及んだのではないか」と言い出す。
9号に賛同した5号が『有罪』に意見を変える。
だが9号は逆に『無罪』と言い始め、5号をバカにする。
4号が「被告人は一人息子のためにピザの宅配を注文した優しい母親だ」と言った後、9号は再び意見を『有罪』に切り替える。
9号が言う。
被告人は帰りが遅くなる事を予測してピザを注文したのだ。
これこそ計画犯罪の証拠になる。
この意見を聞いた12号も、『有罪』を言い出す。
12人の意見が割れ始めたので、再び多数決がとられる事になる。
『有罪』は「2号、9号、12号、5号、11号、8号」の6名で、『無罪』が「10号、4号、3号、7号、6号、1号」の6名となった。
7号は『無罪派』の5人を集めて檄を飛ばすが、6号は「評決不一致」に持ち込んで早く帰ろうと考えていた。
『無罪』仲間の頼りなさを感じた7号は、「被害者のようなクズ男がなぜ結婚出来て、俺はなぜ独身なんだ!」と愚痴をこぼし始める。
3号が情緒不安定になり、急に「帰ります。あとはよろしく!」と言い始めたため、他の人々は彼を宥めて落ち着かせる。
また多数決がとられ、6号が『有罪』に変える。
ここまで自分の意見を述べていなかった陪審員長の1号は、ずっと変えようとしない『無罪』の理由を求められる。
1号は以前「死刑囚の陪審員」を経験しており、自分の1票が他人の死に直結するような経験は二度としたくないと話す。
11号が「傷害致死罪で『有罪』にすれば死刑にはならず、執行猶予がつく筈」という建設的な意見を持ち出し、陪審員たちはそれが妥当だと考え始める。
9号が評決不一致に持ち込もうとするが、「実は自分は弁護士だ」と明かした11号は4号と10号の味方につく。
11号は、実際のピザの大きさを確認して被告人が息子と一緒に食べようと考えていた事を立証するために「ピザを頼んでみましょう」と言い出す。他の陪審員たちは、それぞれが勝手にトッピングの注文をし始める。
11号は、4号と10号が気にしている点を聞き出そうとする。12人の優しい日本人_f0169598_18592095.png
4号と10号の記憶を元にした発言で、目撃者の主婦の証言が信用出来ない事が次第に明らかとなっていく。
被告人が自販機で買って被害者に渡したのは、ジンジャーエールだった。
トラックの運転手の証言も真偽が問われ始め、「運転手は居眠り運転をしていたのでは」という意見さえ出てくる。
11号が目撃者の主婦と運転手の証言の矛盾を指摘して、『有罪』を主張する2号と9号を追及する。
12号は「被害者は自らトラックに飛び込んだのではないか」とまで言い出し、被告人の『無罪』が色濃くなり始める。
ついに9号も『無罪』に変わる。
だが2号は最後まで納得せず、『有罪』を変えようとしない。
2号は自分を捨てた妻と被告人を混同視していたのだった。
11号は2号に静かに告げる。
ここで裁かれているのは被告人で、あんたの奥さんじゃない。
12人の陪審員は全員一致で『無罪』の評決にいたる。
会議室を出て行く4号に11号は「自分は俳優なんだ」と打ち明ける。
そして・・・。

〇雑感

もちろん「十二人の怒れる男」のオマージュとして制作された劇ですよね!!
初演は1990年(平成2年)。
日本で「裁判員制度」が始まった2009年(平成21年)からは19年も前だからこそ、逆にこんなに自由なパロディが可能だったのかも??
とにかく一人ずつの「キャラ」の設定がすごい!!
日本人の特性を上手にとらえて少し誇張して表現させています。
日本人をバカにするんじゃなくて、どことなく「こうした日本人って、憎めないよね~110.png」とニヤニヤしているような気がします。
登場する12人全員が個性的な俳優であり、ただ演技を楽しむだけでも十分に満喫できます。
石田ゆり子が美しいのは勿論なのですが、鈴木砂羽も素敵です!
そしてなんといっても堀内敬子です!!
本作品では「おばちゃん役」ですが、実はこの時34歳
劇団四季に所属していた時は「美女と野獣」のベル役を演じており、ブロードウエイで開催された「美女と野獣 5周年記念特別公演」にも出演しています。
「レ・ミゼラブル」「屋根の上のバイオリン弾き」といった大作でも彼女に会えますよ。
映画では、次のような作品に出演しています。
THE 有頂天ホテル(2006年)
宇宙兄弟(2012年)
ひみつのアッコちゃん(2012年)
高台家の人々(2016年)
嘘八百(2018年)
羊と鋼の森(2018年)
本当に演技が上手い!!

さて、ヘンリー・フォンダの「怒れる12人の男」を観ていた方がよく分かるというレビューもあったのですが、私は全くそう思いませんでした!(もちろん「怒れる」は観た事ありますが・・・)
プロットは似ていつつ、全くの別物ですよね!?
「怒れる」では最後に少年が『無罪』となり、本作品でも最後に被告人が『無罪』になりますが、それはたまたまの一致でしかありません。
謎解きのスマートさは「怒れる」に軍配が上がりそうですが、そもそもそうした点を三谷監督はギャグでうっちゃっています!
ジンジャーエールを早口で言うと、あのように聞こえるのは間違いない105.png

本作品は「映画」ではありませんが、DVDとかになっているのかな・・?と思ってググってみると、ありました!
Am〇zonで、このパルコ版がDVDになっています。
ただし、特典映像付きとはいえ1万円以上しますよ・・・135.png

映画版はまったくキャストが違いますが、こちらもお勧めです!!

ぜひご覧あれ!!





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by django32002 | 2020-09-17 19:02 | 映画 | Comments(0)

あくまで趣味の範囲ですので、そこはよしなに!!


by Yorozu